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影響を与える要因#

この項では、ToF距離測定に影響を与える要因について説明します。

環境光#

ToF距離測定は、カメラが発する光の反射に依存するため、人工光源や太陽光など、その他の光が測定結果に影響を与える可能性があります。

カメラは環境光を測定し、ピクセルが受け取る光エネルギーの合計からそれを差し引くことができますが、環境光を補正するカメラの能力には限界があります。それは、ピクセルが一定量の電荷しか受け入れられないためです。この容量が環境光によって使い尽くされると、目的の光パルス反射に使用できるスペースが少なくなり、その結果、SN比が低下します。

環境光の影響を軽減するため、blazeカメラには光バンドパスフィルターが装備されています。このフィルターでは、カメラの光源(940nm)と同じスペクトルの光だけがセンサーまで通過できます。撮影した画像にノイズが発生するため、カメラの近くでは、そのスペクトルで光を放射する人工光源を使用しないでください。同様に、別のblazeカメラを同時に操作しても、干渉が発生します。この問題を回避する方法については、「複数のカメラの操作」を参照してください。

太陽光は、940nmのスペクトルではあまり強くないため重大な問題にはなりません。

露出過度を回避するために、カメラのセットアップを最適に計画する方法については、「ハードウェアの取り付け(blaze)」を参照してください。

散乱光#

カメラレンズの内部または背後で反射が起こると、散乱光が発生する可能性があります。blazeカメラの製造時には、内部コンポーネントに特殊な反射防止コーティングを使用するなど、細心の注意が払われていますが、これらの反射を完全に除去することはできません。

また、光源のすぐ近くでは、光沢のある表面や物体によって散乱光が発生します。こうした表面や物体は、カメラの視野に直接入らなくても問題を生じさせます。カメラをテーブルトップの中央に配置するだけで、カメラからの光がテーブルトップによってまっすぐ反射されてレンズに入り、距離測定が歪む場合があります。次の図に、これらの影響を示します。

散乱光の影響

散乱光の影響に対処するために、Baslerでは以下の措置を講じています。

  • レンズの慎重な選択
  • 光源の開口部の制限

情報

VCSELの前にあるカバーガラスは清潔である必要があります。

散乱光の発生を回避するために、カメラのセットアップを最適に計画する方法については、「ハードウェアの取り付け(blaze)」を参照してください。

温度#

温度は距離測定の正確さに重大な影響を与えます。考慮すべきさまざまなポイントを次に示します。

  • カメラには、安定した温度が必要です。
    全体的に温度が許容温度範囲内であっても、測定の正確さは温度の変化に伴って変動します。最良の結果を得るには、温度を安定させておく必要があります。最適温度は22°Cです。これを実現するための推奨事項については、「放熱の提供(blaze)」を参照してください。
  • カメラには暖機時間が必要です。
    安定した動作温度に達するには、約20分必要です。正確に測定するには、温度が安定していることが不可欠です。画像の取得を開始するまでに20分かかります。
  • お使いのカメラモデルのトピックで「環境要件」セクションに記載されている動作温度範囲に従います。
    50°Cを超える温度では、信頼性の高いカメラの動作が保証されなくなります。ハウジング温度が0°C未満の場合、カメラは起動しません。
    blazeカメラは、過熱保護機構を備えています。したがって、推奨範囲外の温度でカメラを操作している場合でも、損傷や負傷のリスクは低く抑えられます。

カメラの熱ドリフト補正機能を使用すると、温度が測定精度に与える影響に対処できます。

多重反射の影響(マルチパス)#

正確な距離測定については、一度反射された光によってのみ信頼性の高いデータが得られます。カメラの視野内の他の物体や環境全般によって複数回反射された光では、測定値が影響を受ける場合があります。部屋の角やコーヒーカップの内側のようなくぼんだ形は、光パルスがあちらこちらの面で跳ね返り、センサーが受信するまでの時間が長くなるため、特に問題となります。

鏡や反射性の高い表面(ラッカー塗装されているテーブルトップなど)も、多重反射を起こす場合があり、光パルスを完全にゆがめることもあります。次の図に、これらの影響を示します。

多重反射の影響

多重反射を回避するために、カメラのセットアップを最適に計画する方法については、「ハードウェアの取り付け(blaze)」を参照してください。

対象物の反射性#

ターゲットオブジェクトの反射率も、測定の精度に影響します。次の2つの側面を考慮する必要があります。

  • 対象物の表面の品質によって決まる反射の種類
  • 対象物の色

反射の種類#

次の2種類の反射が発生する可能性があります。

  • 拡散反射
    木材や紙などのマットな物体で発生します。反射性は均一で、光パルスがすべての角度で均等に反射されます。下記の鏡面反射とは異なり、センサーに反射される光の輝度が角度の影響を受けないため、この種の反射の方が望ましいとされます。
  • 鏡面反射
    光沢のある物体(研磨された金属や、極端なケースでは鏡など)や透明な素材で発生します。反射は反射の法則に従って起こります。この法則は、あるの方向の入射光は1つの出射方向に反射され、入射および出射光パルスは、物体表面の垂直方向に対して同じ角度になることを示しています。これは、反射された光パルスが、カメラから放射された光パルスとは異なる経路をたどることを意味し、多重反射の原因となることがあります。

他の危険としては、反射された光が直接センサーに当たることがあります。これは、光パルスが物体の垂直位置に当たると発生します。これにより、単一の光パルスからのエネルギーでピクセルが飽和状態になる可能性があります。

上記の理由から、光沢がある素材や透明な素材の正確な距離測定は困難です。

対象物の色#

明るい物体では、一般的にはより多くの光を反射できるため良好な結果が得られます。一方、暗い物体では一定量の光が吸収されるので、センサーに戻りません。

他の考慮すべきポイントとしては、センサーから物体までの距離があります。一般的に、明るい物体ではより正確な結果が得られますが、物体がセンサーの近くにある場合は、過飽和が発生するほど大量の光を反射します。ピクセルが過飽和になると、距離の測定に役立たなくなります。その結果、測定品質が低下します。

また、カメラが近赤外光に対応していることと、実際に物体が近赤外光を十分に反射しているかどうかを予測することは困難であることにも注意する必要があります。したがって、上記の区別は一般的な経験則としてのみ利用します。

輝度画像は、測定の正確さを評価する際に役立ちます。輝度画像で、飽和度が過度に低くも高くもない状態で照明が良好な対象物では、正確な測定結果が得られます。

あいまいさがない#

あいまいさの問題は、カメラが指定されている範囲を超える光が移動し、カメラがこのスペースを未定義の領域と見なしているために発生します。これにより、あいまいでない範囲の終了時に、新しい測定間隔が0mから再開されます。これは光パルスのタイミングパターンのためにカメラに固有です。

これは、範囲外の物体もカメラに光を反射することを意味します。これに対処するために、カメラは結果を不明確な範囲に「折り返し」ます。

標準動作モードのいずれかでblazeカメラを操作している場合、あいまいさがない範囲は0~30mです。30mを超えると、カメラに反射される光はあまりありません。したがって、あいまいさはそれほど問題になりません。

ただし、Fast Modeを使用している場合、あいまいさがない範囲は、Short Rangeで0~1.5m、Long Rangeで0~10mです。つまり、これらの範囲で測定された対象物の距離だけが、対象物の真の距離を反映しています。

問題をよりよく理解するには、次の例を検討します。

範囲外1mにあるオブジェクトは、あいまいさがない範囲内の1mに表示されます。つまり、Long Rangeでは、物体がカメラから11m離れている場合、その距離は1mと測定されます。

次の図は、この例を示します。

あいまいさがない